会社法案の概要

(2005年4月01日)

商法の一部や有限会社法など、会社制度にかかわる法律を統合して新らたに会社運営のルールを定めた会社法案が国会に提出され、2006年4月〜6月に施行の予定となっている。その概要を整理した。

会社制度

株式会社(1)最低資本金制度を撤廃。資本金1円でも設立が可能。
    
2003年2月から実施されている最低資本金規制の特例制度で設立した会社(確認会社)は、5年以内に最低資本金(1,000万円又は300万円)以上に増資することが必要であるが、 新会社法の施行後は、増資が会社存続の必須条件ではなくなる。しかし、存続するためには新会社法施行後、定款変更の手続きを行い、変更登記を行うことが必要である。
確認株式会社、確認有限会社とも、定款に「解散事由」という項目があり、「設立から5年以内に最低資本金額以上にしない場合或いは合名会社や合資会社などに組織変更をしない場合は、会社を解散する」としているため、この「解散事由」を定款から削除するために定款変更を行い、変更登記をすることとなる。なお、この場合の定款変更は取締役会または取締役の過半数の決定(取締役会のない会社の場合)で行うことができる。
  (2)取締役の人数と取締役会の設置義務は撤廃。
  (3)取締役の任期は2年を原則とし、定款で最長10年まで延長可能。
  (4)株券の発行は原則として不発行となり、定款に「株券を発行する」と記載した場合のみ発行できる。株式譲渡制限会社は、定款に株券発行の記載がある場合でも、株主から株券発行の請求があるまでは、株券を発行しないことができる。なお、株主は株主名簿で確定する。(注)平成16年の商法改正で、定款の規定で株券不発行とすることが認められたが、今回はそれを更に進めたもの。
  (5)株式譲渡制限会社の承認機関は取締役会であるが、取締役会を置かない会社は、株主総会となる。株式譲渡制限は、現在の全ての株式に譲渡制限をつけるか、つけないかの二者択一から、一部の種類の株式についての譲渡制限も認められる。(例)普通株は譲渡制限をするが、優先株は譲渡制限をつけない等。
なお、単に譲渡制限会社というときは、全ての株式に譲渡制限がある会社をいう。株式譲渡制限会社が機関設計の基準となる場合、一部の種類の株式のみ譲渡制限がある会社は対象外となる。
また、定款の規定で、株主間の譲渡には承認を要しないこととしたり、相続・合併の場合も承認に対象とすることも可能となる。
  (6)新株発行の際、株式会社に対する金銭債権で履行期が到来しているものについて、その債権額以下で現物出資する場合、検査薬の調査は不要となる。新株発行の場合の払込取扱金融機関の証明は、残高証明に方法によるものとされ、簡略化される。
  (7)不特定の株主からの自己株式取得手続きが新設され、非公開会社でも自己株式の取得が可能となる。
有限会社 制度を廃止し、株式会社に集約 → 現在ある有限会社は今後も名称使用は可能で、会社法下での「特例有限会社」となる。
合同会社 新設の制度(米国のLLC(リミテッド・ライアビリティ・カンパニー、有限責任会社)の日本版で、株式会社と任意組合の中間の様な形態。
(注)合名会社、合資会社制度は存続するが、規定を一本化し「有限責任社員がいない合資会社が合名会社」の位置づけとなる。

合同会社の特徴

(1)社員が一人の合同会社も認められ、法人も社員となることができる。
(2)原則として、社員は全員が業務執行権をもつが、定款又は社員全員の同意により業務執行社員を選任すると、業務執行社員のみが業務執行権をもつ。
(3)業務執行社員が法人の場合、その法人は自然人を職務執行者として選任し、職務執行者が業務を執行する。
(4)業務執行社員の第三者責任や責任追及訴訟について、株式会社の取締役と同様の規定が置かれる。
(5)合同会社の社員の責任は、有限責任であることから、債権者の利益を守るため、貸借対照表、損益計算書、社員持分変動計算書を作成し、これらを閲覧に供する必要がある。
(6)会社の計算、剰余金の分配に関する規制は、株式会社と同様とされる。

合同会社と他の会社組織の比較

 合同会社合資会社合名会社
社員と責任社員(有限責任)有限責任社員無限責任社員無限責任社員
出資金銭その他の財産のみ(全額払込みが必要)金銭その他の財産のみ労務出資・信用出資が認められる労務出資・信用出資が認められる
業務執行権原則は各社員が業務執行権(業務執行社員を定めるときは、他の社員は監視権)原則は監視権(但し、業務執行権・代表権の付与も可能)原則は業務執行権(業務執行権のない社員は監視権)原則は各社員が業務執行権(業務執行社員を定めるときは、他の社員は監視権)
登記社員の氏名と出資価格は登記事項ではない社員の氏名と出資の内容は登記事項同左同左
内部規律原則として全員一致で、定款の変更その他会社のあり方を決定する

合名会社、合資会社制度の改正

(1)両法人とも法人が無限責任社員になることができ、社員一人の合名会社も認められる。
(2)合同会社、合名会社、合資会社間で、無限責任社員と有限責任社員が入れ替わることにより、会社の組織変更ができる。→社員の有限又は無限責任の状況に応じて、商号(合同会社、合名会社、合資会社の文字)を変更することが義務づけられる。→(例)合資会社の有限責任社員が脱退すれば合名会社になり、合資会社の無限責任社員が全員脱退すれば合同会社となる。
→この場合、社員全員の合意による組織変更決議は不要。
(4)合同会社、合名会社、合資会社と株式会社間の組織変更も認められる。→ この場合、全社員の同意+債権者保護手続きが必要。

合同会社と株式譲渡制限会社の違い

合同会社の社員は有限責任であるため、合同会社で社員から業務執行社員を選任した場合は、「取締役会、監査役を置かない株式譲渡制限会社」との間で、実施的な違いは殆どない状態となる(業務執行社員が取締役に、社員が株主に対応する)。
違いは、株式会社の株主総会での決議は資本多数決で、合同会社は重要事項について社員の全員一致が求められる点である。

以上により、創業時に最も簡素・機動的な株式会社の機関設計は、取締役会を置かず、@ 株主総会+取締役 A 株主総会+取締役+監査役 B 株主総会+取締役+会計参与 C 株主総会+取締役+監査役+会計参与 の4パターンのいずれかになり、現実には、@が圧倒的多数になると考えられる。勿論、株式の譲渡制限はつける。

【合同会社に対する筆者の印象】
以上を俯瞰すると、簡素化した株式会社と合同会社の違いは殆どなく、違いは(原点に戻って)合同会社の意思決定方法や利益分配方法が、組合式(出資者間で自由に定められる)である点に求められる。そうした形態がLLC( Limited Liability Company )と呼ばれ、人的資源を生かす事業に適した会社形態とされる。
⇒ 例えば、A氏とB氏が合同会社を設立(A氏の出資が100、B氏の出資が200)し、事業がA氏の専門能力に負う場合は「A氏とB氏の利益分配に格差をつけない」とすることが可能で、異なる資源を持つ者達の創業に便利な形態とされる。
しかし、株式会社の場合でも、(役員報酬に対する税制面の規制があるとしても)能力や業績にみあう報酬をA氏に支給することは可能であるし(またその様にしないと運営が難しくなる)、結局は「合名会社、合資会社の有限責任版」で、株式会社と並ぶ認知を得ることは難しいのではないだろうか?

むしろ、新たに創設される日本版LLP(Limited Liability Partnership、有限責任事業組合)の方が、互いの力をジョイントさせる組織としてふさわしいと思われる。LLPは、合同会社と同様に、全ての構成員(出資者)が有限責任で、意思決定方法や利益分配方法は構成員同士で自由に定められる組合式であり、合同会社との違いは課税方式にある。
合同会社は、他の形態の法人と同じく合同会社自体に課税され、LLPは、LLP自体には課税されず、LLPに出資する構成員に対して課税が行われる(パス・スルー税制、構成員課税)。
構成員課税は、LLPが赤字、黒字、どちらの場合にもメリットがある。
LLPが赤字の場合は、構成員が損益通算できる(他の所得を一本化して課税所得を算出)。
LLPが黒字となり、構成員が配当を受けた場合は、二重課税を避けることができる(会社等の法人では、会社の所得に対する課税と配当を受けた出資者への課税という二重の課税が発生するが、LLPの場合は配当への課税だけですむ)。
但し、LLPの場合、構成員は配当を受けることはできても報酬(給料)を受けとることはできず、合同会社の場合は、配当も報酬(給料)も受け取ることができる点に注意する必要がある。
(注)LLP法(「有限責任事業組合契約に関する法律」)は、新会社法よりも先に施行される見通し。

組織再編に関する規制緩和

(1)合併対価の柔軟化 … 法施行の1年後に解禁(2007年施行見通し)
  合併時に、消滅会社に支払う対価として、外国株や現金、不動産などを認める。これにより、三角合併が可能となる(外国企業が日本に子会社を作って自社株を日本子会社に移し、それを対価に子会社を他の日本企業と合併させる手法)。
  … 現在は、合併の際、吸収される会社の株主への合併の対価は、存続する会社の株に限られているが、存続会社の株だけでなく、現金や債権、他社の株なども幅広く認められる。
(2)簡易組織再編行為 … 要件を緩和
  消滅会社の規模が、存続会社の発行済株式数の20%以下なら、株主総会なしで合併が可能に(現在は5%)。

会社経営

(1)株主代表訴訟 … 制度見直し
  株主が、自己・他人の不正な利益の獲得を狙ったり、会社に損害を与える目的で訴えを提起したと判断される場合、裁判所が拒否できる。
(2)会計参与 … 新設
  公認会計士、税理士らが、取締役、執行役と共同で財務諸表の作成に携わる(設置は任意)。

【余計なコメント】 監査役は、会計監査と業務監査の両方の義務があり、中小企業がこれを置くことは大変であるため、信頼性の高い計算書類を作成する専門機関を設置し、監査役を置かずに済むようにしたもの、というフレコミであるが、会社側からみるとその分コスト増となり、会計参与側からするとリスクに見合う報酬を得られるかの問題があり、設置する会社などあるのだろうか、という印象。

(3)定款変更による機動的対処
  定款を変更すれば、合併や取締役の解任のための株主総会の決議要件を引き上げたり、配当水準や配当回数を取締役会で決定できる。なお、配当など利益処分を取締役会だけで決定するには、事前に定款変更をし、取締役の任期を1年にすることが必要。

敵対的買収への防衛策強化

(1)強制転換条項付き株式を使った議決権比率低下(ポイズンピル1=毒薬条項)
  発行済み普通株式を、防衛策を備えた強制転換条項付き株式に特別決議で転換可能に。転換に不満な株主には、株式買取り請求権を容認。
(2)新株予約権を使った議決権比率低下(ポイズンピル2)
  買収者が一定割合以上の株式を買占めた場合は、買収者の新株予約権が消滅。買収者以外の株主に自動的に株式を発行可能に。
  
(1)(2)を用いることで、次の様な措置が可能となる(例示)。但し、経営支配権の維持が目的であれば、Aで委員会は発動を認めないし、認めたとしても法廷での争いとなる可能性はある。
@敵対的買収者が現れた場合、その時点の全株主に対し、持株数の2倍の新株予約権を交付する。
A取締役会は、第三者委員会に対抗措置が必要かどうかの判断を諮問する。
B必要と判断されれば、買収者の予約権だけを強制的に買い上げ、他の株主の分は全て株式に換える。
(3)拒否権付き株式(黄金株)
  会社が、譲渡制限を付けた拒否権付き株式を発行できる。→ 友好的な株主に株主総会での拒否権を与える。

会社の計算に関する制度の整備

(1)利益配当制度がなくなり、剰余金分配制度に変わる。現在の利益準備金と資本準備金は、準備金に一体化される。
分配可能額=(最終の貸借対照表上の留保利益等)−(自己株式の価額等)−(当期に分配した金銭等の価額)
   
会社が株主にお金を分配する手段は、現在は配当以外に自社株取得、法定準備金の減少に伴う払い戻し等があるが、それらの財源上の規制が異なっていたものを「剰余金分配」として統一するもの。
(2)剰余金の分配は期間の利益配当ではないため、株式会社は株主総会の決議により、原則としていつでも剰余金の分配を決定できる。期中に分配を行う場合のために、期中での決算手続きに準じた制度を設ける。
(3)債権者保護のため、資本金の額にかかわらず、純資産額が300万円未満の場合は、剰余金があっても株主に分配することはできない。
(4)株式会社は、いつでも株主総会の決議により、資本の部の計数を変動させることができる。
利益や準備金を資本に組み入れ、資本金を増やす場合は、株主総会の普通決議による。
資本を減少させるには、株主総会の特別決議が必要であるが、減少後も分配可能な剰余金が生じない場合は、定時総会の普通決議で足りる。
資本金・準備金を減少して剰余金とするには、債権者保護手続きが必要であるが、定時総会における準備金の減少で、減少後も分配可能な剰余金が生じない場合は、債権者保護手続きは不要。
(5)株式会社は、貸借対照表、損益計算書、営業報告書、付属明細書に加え、新たに「株主持分変動計算書」の作成が義務づけられる。株主持分変動計算書は、株主持分の会社財産価格の期中における変動を表すもので、形式等は別途定められる。
(6)全ての株式会社は、決算公告をしなければならないという義務づけが維持される。

資金調達

(1)DES(デッド・エクイティ・スワップ、債務の株式化)で、検査役の調査が不要となる
従来は、金銭に代えて債権などを現物出資して株式を取得する場合、原則として検査役による財産評価などの調査が必要であったが、会社法下では、弁済しなければならない価格が決まっている債権で、出資額がその額を下回っているときは、検査役の調査は不要となる。また、市場価格のある有価証券を出資する場合も調査が不要となる。
(2)会社設立の際の現物出資は、資本金の1/5以内という条件が削除される。
(3)自社株を売り出す場合は、新株発行と同じ形式でしかできなかったが、市場で自社の株式を売却することを定款で明記すれば、市場でのばら売りが可能となる。但し、インサイダー取引などの利用防止のため、市場で売却できるのは、単元未満株式の買取り請求に応じて得た株式や、事業を全部譲り受けた会社が持っていた自社株式などに限定される。
(4)現物配当(株主に対する現金以外の財産の配分)が、株主総会の特別決議を経ることで可能となる(自社商品を配当として配分するなど)。

その他の改正点

(1)類似商号規制は廃止され、同一市町村内でも住所が違えば同一商号の会社を登記できる。
(2)会社の清算手続きが、裁判所の監督に服するという規定が削除されるなど、簡略化される。
(3)取締役会を置かない株式会社も社債を発行することができる。また、合同会社、合名会社、合資会社も、株式会社の社債と同様の規定が設けられる。


【これまでの商法改正】
1994年 自社株買い解禁
1997年06月 ストックオプション制度導入
1999年10月 株式交換制度の創設
2001年04月 会社分割制度の創設
10月 株式分割の自由化
2002年04月 新株予約権制度の創設
5月 取締役・監査役の責任限定制度導入、監査役の任期延長
2003年04月 委員会等設置会社の導入


[ 情報ページの表紙へ ]


Copyright (C) (株)ビークライン(株)サポネット 2005 All Rights Reserved.